いきなりポルシェじゃまずいのか?

  クルマは「オモチャ」だ。せっかく大金を払って買うならば、一番気に入ったのに乗りたいものだ。経験者にアドバイスを求めれば、最初は国産車が無難だと誰にでもわかりそうな親切なコメントがもらえたりする。ただ「最初は・・・」ってなんだ? 

  昔みたいに乗りたいクルマがたくさんあって目移りする時代ならいざ知らず、今や新車販売ランキングを見渡しても乗りたいクルマなんてないし、年配の人々がやたらと崇拝する輸入車もぜんぜん欲しいクルマが見当たらない有様だ。だからこその「クルマ離れ」なわけだ・・・。

  クルマなんて生活に必要ない都市圏の住民にとって、まったく使わなくても毎月3万円程度経費がかかるわけだから、それこそ「あってもなくてもいい」程度のクルマが彼らに売れるわけがない。どうしてもこのクルマが欲しいと思わせて、初めて購入候補になりえる。

  まあ日本の自動車メーカーもそんな気まぐれでわがままなユーザーにわざわざ買ってほしいとは思っていないので、「ダサいクルマなんていらねえ」は全くの見当違いではある。日本の自動車メーカーが最優先に考えるのは、クルマが生活必需品の地域に住む人々のことだ。よって費用が抑えられる軽自動車のシェアが上がるのも当然のことだし、決して悪いことではない。千葉県の南端に出掛けていって「軽ばっかりだな・・・」なんてつぶやくのは世間知らずの恥ずかしいヤツのすることだ。

  自動車メーカーにほぼ見捨てられている、ということを都市の住民は少しは自覚すべきだと思う。自分達のことを真剣に考えてクルマを作ってくれるメーカーなんて無いということを・・・。それでも世界中探せば、願いを叶えてくれる素晴らしいメーカーが一つくらいはあるかもしれない(日本にはないが・・・)。じゃあ輸入車メーカーで都市の住民の要求を最大限に理解しているのはどこか?

  性能や価格をいろいろと考えた上で、最も日本の都市住民を幸せにしてくれる輸入車メーカーを独断と偏見で選ぶとすればそれは「ポルシェ」だ。バブルの頃のポルシェではなく、今のポルシェこそが最良ではないかと思うのだ。たしかに高級車の代名詞のようなブランドだけれども、その製品群はいろいろな意味で理にかなっている。あくまで「オモチャ」という視点を強調しての結果だが・・・。

  現在のポルシェはこだわりの設計のスポーツカー及び、高級なセダン(パナメーラー)とSUV(カイエン)を作っている。セダンとSUVに関しては無理にポルシェを選ぶ必要はない気がするが、スポーツカーに関してはやはり一日の長がある。

  クルマを「オモチャ」として購入するからには当然に、走らせるコースを想定して選ぶだろう。サーキットに通って全開走行を楽しむのもいいが、日本には大自然の懐に飛び込んでいける立派な高速道&自動車専用道がクモの糸のように張り巡らされている。これだけの良いドライブウェイを持ちながら、日本車にはその高低差溢れるコースを自在に走るクルマが実はあまり普及していない。勤勉と言うべきか、海外旅行好きと言うべきか日本人にはクルマ文化がなかなか根付かないようだ。

  ポルシェの入門モデルと言える「ボクスター」と「ケイマン」は新車で700万円程度するので決して安くはない。しかしこれらのクルマ以上に快適でかつコストパフォーマンスに優れたクルマは案外見当たらないのだ。ボクスター&ケイマンの特徴は大排気量NA(約300ps)で比較的軽量なボディを引っ張るタイプのスポーツカーだ。高低差のあるコースで登りも下りもトラクションが確保しやすいミッドシップ(運転席後方にエンジンがある)というだけで、日本車にはすでにライバル不在だ。ただ同等以上の性能を有する日本車もないことはないが、いずれも日本得意の4WDターボに限定されてしまう。

  日産GT-Rは世界最高レベルの性能を持っているが、購入費用はボクスターを軽く上回る。スバルWRXと三菱ランエボXは500万円以下で買えるお得さがあるが、デザインの平凡さに正直言って不満が残る。ボクスターに一番近いクルマがFR設計のフェアレディZだ。ただこのクルマはスカイライン譲りのヘビーな車重という難点があり、あくまでアメリカ向けに作られた大平原を疾駆するためのクルマであって、山登りは無理ではないが500万円の価格を考えるとライバルのケイマンを決定的に上回っているとは言い難い(下取りで価格差はほぼ埋まる)。

  スポーツカー以外にもなかなかのクルマはある。トヨタからマークXというセダンが発売されている。これの3.5Lモデルなら400万円程度で購入可能だ。このクルマはセダンでも比較的軽量で重心も低く作られていて、ドライビングを楽しめるクルマとして親しまれている。しかし国内専用モデルということで、足回りの洗練度に不満が残る。乗り心地はスポーツカーよりも良いのだが、その分踏ん張りが利かないので高速旋回時にはちょっとした恐怖が押し寄せる。これではポルシェと比較するには苦しい。

  この弱点を解消したモデルとして最近になってレクサスIS350Fスポーツという、有力なスポーツセダンが発売された。ただこちらは購入価格が600万円を超えてしまう上に、やはりポルシェよりも車重があるのが難点だ(もちろん良い点もたくさんある!内装の豪華さなど・・・)。デザインもいいので一番の対抗馬と言ってもいいクルマではあるが・・・。

  それにしても日本勢はなんでこんなに手薄なのか(人気輸入車なのに対抗モデルがないとは・・・)? それは今まで覇権を握っていた「あのメーカー」が2012年を持って、自慢の高出力スポーツカーをラインナップから落としてしまったからだ。まあ去年までは作っていたからまだまだ新古車がいくらかは流通していて、それを300万円程度で買う事は可能だ。それと入れ替わるようにトヨタとスバルが新型スポーツカーを発売してくれた。めちゃくちゃ頑張って拡販したせいで、そこいら中で見かけるクルマになってしまったが・・・

  結論を言うと、外国向けに日本メーカーが作ったスポーツカーよりもポルシェのほうが断然に費用対効果が高いのではないかということになってしまう。もちろんそれなりにお金があればの話だが・・・。

  

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