ホンダ・シビック VS MAZDA3セダン




シビックは「高い」!?

現行シビックのベースグレード「LX」(1.5Lターボ)の本体価格は319万円。数年前なら「ちょっと高い」だったですが、今では「妥当」か「むしろ安い」くらい に思う。10年前にボルボから飛び出した日本でのヒットモデル「V40」は、フォードの1.6Lターボで180psを出していてスタート価格は260万円くらいだったが、ある程度装備が充実したグレードが329万円(2014年)なので、HONDAセンシング、シートヒーター、クルコンなどが当たり前についている今のシビックは、私のようなクルマ初心者にも十分に説得力がある価格だ。



10年落ちのV40を物色すれば、多少のリスクはあるとはいえ100万円前後で、まだまだ現役バリバリのエクステリアを維持する「ホットハッチ」が買える。V40は興味がある上にリアルな価格なので、比較的近い販売店で手頃なモデルがあると衝動買いしてしまいそうだ。2013年頃のV40でも個体によってはヒートシーター&パワーシートが付いている。シャシーは信頼と実績のあるフォードグループ(某M社の設計)のものだし、搭載される1.6Lターボはゴルフ7が大好きな福野礼一郎さんが、わざわざ「Cセグ最良」とお墨付きを与えた逸品。燃費もハイオクながら、当時のズボラなモード燃費で16km/Lくらい。



Vテックターボとエコブースト

日本でV40がVWゴルフと並んで月1000台越えを連発していた2013〜2014年頃に、ホンダは次世代の「Vテックターボ」構想を発表した。1L(日本未導入)で100ps前後、1.5Lで200ps前後、2.0Lで300ps前後で、排気量に正比例しない出力は、3種類のユニットが使われる場面でそれぞれに長所を発揮するとか説明していた。1Lは弱点となる低速トルク重視の低回転過給でドイツ車と同じ思想で4000〜5000rpmで最大出力が出る。1.5Lターボは排気量以上のパフォーマンスを引き出して、2.4L自然吸気Vテックの置き換えユニットだとされた。


2.0LターボはtypeR向けのスポーツチューンで330ps / 6500rpmのポルシェのような高回転型ターボになっている。当時はターボを用途に応じて使い分ける意味があまりよくわからなかったが、信号地獄の日本には1.0Lターボを設定しないなど、ホンダの戦略がだんだんわかってきた。この「3つのターボ戦略」をホンダよりも先に展開し始めたのが、フォードグループだった。2013年当時も今も低回転ターボが主流であるゴルフやAクラスなどのドイツ勢とは違って、フォード「エコブースト」の走りの良さでアピールしたV40が、ブランド力のハンデさえも跳ね返して人気を得たわけだ。



ターボが分断を呼ぶ

当時は輸入ブランドの急速なターボ化に対して、「すごい進化だ!!」とノリノリな人々がいる一方で、「走りがつまらなくなった」とシラける人もいて、どちらも半分半分くらいだっただろうか。typeR、ポルシェ911、BMW・M5などのターボ化に関しては多くのファンが戸惑いを感じていたと思う。AJAJの一部のライターは「ターボ化しない日本メーカーは周回遅れ」みたいなステマレビューで欧州ブランドを後押ししていた。それを読んだだけで、自分の頭で考えないオッサンたちに意地悪いコメントをたくさんもらったな・・・。


フォードやホンダのように「ターボ」にエンジンの未来を見出していた勢力もあれば、自然吸気エンジンの時代に世界中から称賛されていたドイツ勢としては、ちょっと気が進まないターボ化プロジェクトだったのかもしれない。ボッシュやコンチネンタルを中心に挙国一致で、ダウンサイジングターボ化を進めて、世界の成長市場(中国など)を勝ち抜くという目標があったからこそ、権力基盤を持たない中道のメルケルが16年間も無事に政権を全うできたのもある。プーチンとも習近平とも対話できる西側の指導者が去れば・・・そりゃ戦争も起こる。



ドイツ車の憂鬱

本音では自然吸気で存分にやりたかったであろうBMWは、この10年あまりでターボの高効率化とフィールの改善に真剣に取り組んできた。ひたすらに高出力を絞り出すのではなくて、180psや245psくらいの一般的なスペックの2Lターボを、どれだけ違和感なく回すかを考えて、低回転重視だけではなく中速域でも過給が効く乗り心地重視のツインスクロールターボが導入されている。タービンが2つの「ツインターボ」ではなく、排気をタービンに取り込む「流路」が2種類用意されている仕組み。


ユーザーの多くが業界全体のターボ化に「疑問」を感じるくらいだから、メーカーの開発者の本音も同じようなものだっただろう。そんな中でエコブーストを搭載したフォード・フォーカス(3代目)が2010年に発売され大ヒットを記録する(2012年の世界最量販モデルらしい)。しかし「ターボ化」による見解の違いから、長年の開発パートナーだったフォードとMAZDAが決別を発表した。MAZDAはポルシェやBMWのようなGTカーブランドとしての価値を追求すべく、自然吸気エンジンの理想に通じる新型エンジンを構想したかったのだろう。



伝統を守る

ポルシェやBMWは国の都合でターボ化せざるを得ない。このままMAZDAがターボ化してしまったら、一体どこのメーカーが自然吸気フィールの気持ちの良いGTカーを作り続けるというのだ!?・・・それくらいに幹部は崇高な理想を語っていたかもしれない。そんなことは全く想像もしなかったであろうAJAJのアホなライター達は、MAZDAの開発者に「なんでターボ化しないの?コストがかかるから?」と、馬鹿にしながらしつこく絡んでいた。だから今ではAJAJはMAZDAから無視されている。今はユーチューブでMAZDAをやたらと崇めている小沢コージさんもその一人だった(動画で「懺悔」企画を!!)。


フォード傘下の同志だったジャガーもグループから離脱し、当初はスーパーチャージャーによる理想のG Tカーエンジンを追求していた。しかしGTカーを作る「総合自動車メーカー」は他社が真似できないような理想を追いかけているだけでは、当たり前だけどビジネスを続けるだけの売上は確保できない。独立してからも魅力的なGTカーを発表してきたジャガーだけど、すでに2030年のフルBEV化が宣言されていて、イギリス政府のEVシフト戦略と歩調を合わせた次世代ビジネスに乗り出している。



2つの理想

もう大体オチはバレているとは思うが、フォードの「エコブースト」にダイレクトに影響を受けたホンダの「Vテック・ターボ」を使ったシビックが、MTを操る昔ながらのGTカー・スタイルで日本でも販売されている。それに対して「意地」で自然吸気の軽やかな吹け上がりを追求してきたMAZDAは、「アンチ・エコブースト(過給は最小限)」な内燃機関であるスカイアクティブXをMAZDA3とCX-30に搭載している。MAZDA3ファストバックとCX-30にはスカイX&MTの設定があるが、MAZDA3セダンはATのみなのはなぜだろう!?今後のMCに期待。


ホンダもMAZDAも「クルマ好き」にしか刺さらないGTカー・スペックのCセグ・ロードカーをラインナップするために、それぞれに軽自動車市場でナンバー1になったり、SUV市場で大成功したりと、苦労を重ねてきた。「作りたいクルマがあるから足場を固める」と経営陣が語ることもあった。常に「売れるクルマだけを作っていてはダメ」という意識がどこかにあるのだろう。あるいは自分達が乗りたいクルマだから強引にラインナップしているという説もある。ストーリー性のあるクルマこそが、新しいユーザーをクルマの世界に引き込む。嬉しいことにシビック・ターボもMAZDA3・スカイXもそれほどメチャクチャな価格ではない。



「走り」こそが・・・

両社は今年(2023年)にスポーツカーにおいてもなんらかの動きがあるらしい。東京モーターショーの頃には発表がありそうだ。「何か」ではなくて、これまで何度も噂になっていたS2000とRX7が同時に復活しそうな気配がプンプンしている。状態が良い中古車価格は新車価格を余裕で上回る状態が続いている。リーマンショック以降はメーカーにも余裕がなく、もう復活は難しいと考えられていたけども、初代NSXを作るためにアルミ精錬施設を建てたバブルの頃とは違って、スポーツカーも乗用車も同じラインで作れる時代になっているのでハードルはそれほど高くなさそうだ。


シビックやMAZDA3のようなGTカー、あるいはロードスター、RX7、S2000、NSXのようなスポーツカーを、クルマ作りの高い理想を掲げて、それに従って突き詰めて完成度の高いクルマを発売する。それこそがホンダ&MAZDAの伝統であり、世界中のクルマ好きが勝手に期待してしまっていることだ。初心者もエンスーも熱狂できるブランドってのは本当に素晴らしいと思う。グローバルで工業製品が余剰気味で、「記号的価値(ブランド力)」が求めらる時代に、自動車メーカーに求められる「価値」をどこよりも強力に発信するためには、得意分野で存分に強みを発揮するしかない。


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