軽いは正義!?・・・メルセデスとジャガーの闇。

  世界のクルマはどんどん大きくなって、あまりに大きくなり過ぎて、ちょっと小さくなることもあったりしますが、特にグローバルモデルのサイズは大きくなる一方です。トヨタ車は国内専売がまだまだ多くて、国内向けカローラ(Cセグ)やプレミオ/アリオン(CDセグ)は今も5ナンバーのままです。かつてマツダのCDセグとして販売されていたカペラは、アテンザと名前を変えて、初代アテンザは3ナンバーに。二代目アテンザはDセグのマークXを大きさで上回り、現行の三代目アテンザはEセグのクラウンより大きくなって登場しました。

  トヨタブランドのフラッグシップが、マツダやホンダのCDセグだったセダン(アテンザ、アコード)に車格で負けるわけにはいかないですよね。現行クラウンへFMCするときに、先代と同じシャシーにもかかわらず、慌てて全長を伸ばしてアテンザに車格で負けないボデーにしました。もちろんHV導入する際にキャビン&ラゲッジを確保するためでもあるでしょうけど・・・。

  クルマがデカくなれば当然に車重が増えて、動力性能を確保するためにエンジンの出力も大きくなって、燃費が悪くなるのが当たり前だと思うのですが、そこにはご存知の「エコカー減税」という制度が横たわっていて、先代と比べて一定の燃費向上を達成したクルマにその権利が付与されますから、クルマはどんどん大きくなっているのにほとんどのモデルが燃費が良くなる!!という珍現象が2010年頃からずっと見られます。

  ボデーが拡大しても燃費が上がる方法はいろいろ言われていますが・・・①軽量素材を使う。②エンジンの燃焼効率を良くする。③空気抵抗(CD値)を下げる。④ミッションとエンジンの協調を図る。⑤アイドリングストップ ⑥回生ブレーキ ⑦エアコンの省エネ ⑧タイヤ ⑨伝達効率の向上 ⑩ハイブリッド化 などなど。

  某メーカーの人から聞いた話ですが、乗り心地などを全く無視すれば50km/Lくらいは余裕で達成できるらしいです。①〜⑩まであれもこれも取り入れていくと、一般的にはどんどんドライブ・フィールが悪くなります。この中で比較的にデメリットが少ない部分から着手するのが、乗り味を意識するセダンやスポーツカーの正しい開発方法だ!!なんて勝手に決め付けてクルマを選ぶを結構わかりやすいんじゃないでしょうか。

  メルセデス、BMW、ジャガー、マツダなどのミドルセダンが「0.25」くらいで競っているのが③のCD値です。これは研究すればするほど、燃費、動力性能、静音性が全て向上するのでプレミアムブランドには必須の要素だと思います。Cクラス、4erグランクーペ、XE、アテンザは特に優れているようで、そのせいもあってか乗ってみてすぐに「いいな!!」と感じました。

  「CD値で頑張っている」これこそがハイクオリティなセダンを作るメーカーの条件!? というのも③以外の他の要素は、燃費こそ向上するもののフィールが悪くなる可能性が高いですから。具体的な車名を挙げるのは控えますが、CD値を頑張っていない中型セダンに400万円以上払うのは、ちょっと馬鹿馬鹿しいと思ってます。そしてCD値のお手本のような「この4台」をさらに比べると、CクラスとXEに関しては①の軽量化を「アルミ素材」を使ってに行っています。それに対して4erグランクーペやアテンザでは今のところは積極的な軽量化はみられません。アルミも結構好みが分かれるポイントです。

  愛知で生産されるレクサスや、栃木で生産するインフィニティは今のところアルミ素材を使うモデルは少ないです。それに対してジャガー、メルセデスに続いて、BMWも7er&5erでアルミを使うようになりました。数年前に日本ではアルミニウム製錬工場が無くなりましたが、オイルショック以降は製錬に必要な電気代の高騰によって、日本の国際競争力は低いまま推移しています。ホンダがアルミボデーの初代NSXを国内で生産する際には、発電所が併設されている栃木に専用の高根沢工場(生産終了とともに閉鎖)を用意するなど、日本メーカーが国内生産をするにあたって最も弱点と言える「アルミ」。欧州プレミアムはこれに勝負をかけているようです。

  ちなみにホンダは埼玉・狭山工場でアルミ・ボデーを採用するレジェンドの生産を行っていますが、これに使われる押出成形されたアルミ材は、群馬・伊勢崎に工場を構える国内最大手のUACJ(5741)から調達しているようです。メルセデス、BMW、アウディの上級モデルが挙ってアルミを使い、ホンダも採用しているので、当然の成り行きでしょうけども、レクサスもアルミの大幅採用を表明しています。トヨタは高級車によっぽど自信がないのか世界の傾向をすぐに真似る傾向がありますね・・・。

  アルミボデーを大胆に採用した現行のメルセデスSクラスのグレードのうち、日本で展開されている「300h」は20.7km/L、「400h」は15.4km/L ・・・これだけ見るとアルミはスゲー!!と思ってしまいますが、どちらも車重は2000kgを超えていて、ほぼ同じサイズで非アルミの日産シーマHV(1950kg)よりも重いです。ディーゼルHVの「300h」と、V6ガソリンHVの「400h」のどちらもややこしいことにEV走行可能なレベルのモーターとバッテリーを搭載している(シーマHVも同じだけど)ので、この分の重量増をアルミボデーで相殺しているとも考えられます。

  メルセデスよりも早くからアルミに取り組んでいたジャガーは、まだHVを導入していません。非アルミの3erと同じサイズながら、車重は1600kgを超えるなど、モード燃費も平凡でアルミボデーのメリットがあまり出せていないです。一体何の為のアルミなんだー。BMWもレクサスも100kg超の減量を掲げてアルミの導入をアピールしていますが、ジャガーは? フラッグシップのXJは直4ターボモデルだと5135mmの全長ながら1780kg、V6モデルで1890kgに抑えられているので、同じくアルミBMW7er(直6で1880kg)と同じ方針なんでしょうけど(XJの方が先に登場)。

  なんでアルミのXEは非アルミの3erと同等の重さがあるのか? FRシャシーで、4気筒、6気筒、ディーゼルを使い分ける・・・同じコンポーネンツをBMWとジャガーに提供するエンジニアリング会社があるのでしょうか? 「闇」ってほどのものではないですけども、欧州車が久々に獲得した日本メーカーに先行するマテリアル「アルミ」を使って、どれだけ「競争力」があるクオリティカーを作って来るのでしょうか?

  単純に高級車を軽くすれば「価値も軽く」なる可能性もありますが、20.7km/Lという意味不明なモード燃費には日本メーカーのお株を奪うくらいのインパクトがすでにあります。「環境性能」へのアプローチは、クオリティカーをこれから作っていく幾多のブランド(日独英以外にもボルボ、キャデラック、DS、アルファロメオなどありますが)にとって、思いの外に「紛れ」を生む要素になっていくんじゃないでしょうか? どっかのブランドのように「詐欺」をしてはダメですけど、後発プレミアムブランドにとっても案外すんなりと業界をひっくり返すことができるチャンスかも・・・。


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