マツダがFRシャシーで高性能化に邁進する意味とは!?
40万台なんてチョロい!?
初代モデルが登場して7年余りが経過したマツダCX-5は、短期間でマツダが目指す「1プラットフォーム=40万台」の目標を、1モデルだけで超える大ヒット車となった。2012年から「第六世代」「魂動」デザインと称して、全ラインナップのテイストを揃えてきたマツダは、主力のアクセラを軸にアテンザと新規モデルCX-5の3車種のシャシーを統一した。まさか3モデル合計で40万台に達すれば「御の字」というわけでもなかっただろうが、アクセラとCX-5がそれぞれ個別に40万台を達成している。
第六世代の戦略は極めて妥当
長らくフォードの傘下で主に欧州市場を目指した特異なクルマ作りを展開してきたマツダにとって、第六世代はフォードから独立しいよいよ本腰を入れてアメリカ市場を攻略するための戦略上の大転換が課題だった。マツダの代名詞だったロータリースポーツや、欧州市場で大きな反響を得ていたアテンザのハッチバックモデルを廃止。アテンザのセダンは北米と中国市場で流通するサイズのものを欧州、日本にも導入。さらにアメリカ市場で需要が伸び始めていた新型SUVとしてCX-5を導入。
ちょっとした誤算
北米市場での先駆者HONDAに習って中型車3モデルのプラットフォームを統一する。HONDAはCR-V、アコード、シビックをそれぞれ月に2〜3万台販売しているが、MAZDAの目標はアクセラ(MAZDA3)、アテンザ(MAZDA6)、CX-5がそれぞれ月に1万台という意欲的なもので、SUVブームの高まりを受けてCX-5は現在月に15000台前後で推移している。MAZDA3とMAZDA6も単月では10000台を突破することもあったが、安定的にシェアを取ることができていない。MAZDA3は価格競争で、MAZDA6は大排気量モデルが無いことが痛い。アメリカ人は3.5Lないと男のクルマだとは思わないらしい。ポルシェのケイマン、ボクスターも2.5Lターボに変えたら売上がガタ落ち・・・。
トランプはマツダを潰しにきた!?
CX-5は現在も全量が日本からの輸出であり、アメリカで販売されるモデルの中では、NAFTA生産を除き最も輸入が多いモデルになっている。トランプ大統領の来日では極秘の日米貿易交渉が行われた!?とか噂されているが、トランプを一番刺激しているモデルがCX-5かもしれない。直近の販売データではアメリカ市場向けの海外生産比率は、マツダ100%、三菱100%、スバル46%、トヨタ34%、日産24%、ホンダ10%となっている。三菱は撤退を視野に入れていたが米国市場から残留を要請されてズルズルと7000〜8000台/月くらいの販売であり、スバルは人気が続いていて北米工場がフル稼働状態となり、日本市場の苦戦もあってアメリカ向けに多くのラインを使っていて現在は46%まで上昇(台数ベースではマツダを越えた)。スバルよりは少ないが100%の約20000台を日本から輸出しているマツダは最も心証が悪そうだ。
中国市場は儲からない・・・
マツダやトヨタは日本生産を維持する方針をとっていて、トランプ政権へのアメリカ国民の支持が続き再選を果たしたりしたら風当たりはどんどん強くなっていくだろう。トヨタとマツダは合同でアラバマに新工場と作るなど柔軟な姿勢で立ち回っているけども、今後は「輸入する必然性」を求められていくことになりそうだ。すでに中国市場では政府が認めた「高性能モデル」でない限りは中国国内での生産しか認めないという方針をとっている。しかもメルセデスEクラスやBMW5シリーズであっても「高性能」のお墨付きが取れず現地生産を余儀なくされるほど厳しい。日本メーカー各社もCX-4など中国生産事情に適した仕様の中国専売モデルを開発している。工場とサプライチェーンの維持が難しくなったスズキは撤退するしかなかったのだろう・・・。
アメリカメーカーは消極的
アメリカも今後は中国の方針を真似してくる可能性が高い。マツダが国内生産を維持するためには中国やアメリカでは生産できないような「高性能」、つまりポルシェやフェラーリとまではいかないけど、アメリカメーカーが簡単には真似できないクオリティのクルマを作る必要がある(と考えられる)。幸いなことにアメリカメーカーはすでに乗用車の開発に消極的だ。自社の技術底上げのために独オペルを最後まで保有していたGMは、昨年にPSAにあっさり売却を果たし欧州市場からの撤退を表明した。フォードも乗用車開発のほとんどを凍結することを発表。クライスラーは親会社のフィアットとともにルノー日産との合併に傾いている。
高級サルーンはどこが作る!?
マツダがこれから作ろうとしている高級サルーンは、アメリカメーカーの選択肢からすでに消えていると思われる。リンカーンは廃止が決定。GMの欧州撤退でキャデラックの戦略も大きく変わった。それに対してレクサスやマツダはスチュードベーカー、ナッシュ、パッカードみたいなクルマを21世紀になってもまだ作ろうとしているのか!?アメリカの投資家は不思議に思っていることだろう。とうとうレクサスLSはメルセデスSクラスを超えることはできなかった。メルセデスもレクサスもどちらも手詰まりな状況下で、市場は依然としてメルセデスSクラスを選び続けている。
日本メーカーの鬼門
マツダの新型FRサルーンはEセグになるだろうけど、すでに北米市場にはお手本になるようなモデルは100万台以上の規模を持つメーカー/ブランドには1台もない。失礼だが全てが死んでいる。ポルシェ・パナメーラとマセラティ・ギブリは一定の人気があるようだけど、ブランド全体でポルシェが5000台/月、マセラティが1000台/月なのでたかが知れている。それでも大きな開発予算と技術を持つ日本のビッグ3が、存在感、艶、性能でユーザーを魅惑するドイツとイタリアの2モデルの間に入っていけるクルマをとうとう作れなかった。インフィニティQ70は完全に過去のもの。アキュラRLXはあれだけの性能を有していながらホンダの黒歴史になってしまった。レクサスGSはデビュー当時から完全にずっこけた・・・。
マツダってつくづく愚直だよなー
マツダの「ヴィジョン・クーペコンセプト」がそのまま4ドアクーペとして登場し、400ps前後の直列6気筒3チャージャーのユニットが搭載され、ギブリ75,000ドル〜、パナメーラ86,000ドル〜くらいの価格設定ならば、日本メーカーが跳ね返されてきた「壁」を越えるかもしれない。これまでの屈辱の汚名を晴らしてこい!!とトヨタに言われたのだろうか!? 突然としてスイッチが入ったマツダのFR構想だけども、どうやらマツダの幹部連中は、レクサス、インフィニティ、アキュラが超えられなかったところを突破するところにカタルシスを感じているらしい。エンジニア魂に期待したい。
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