2015年4月12日日曜日

150万円スポーツカーを作ってもいいんじゃない?

  巷で(それはどこ?)、「こんなクルマあったら買う!」とかいうクルマ好きの他愛のない話の中にしばしば登場するものといえば・・・「150万円くらいのスポーツカー」。それもある程度のスペックが備わっていて、150psくらいの出力で150万円!つまり「1馬力当たり1万円」という遥か昔に通用したレートでクルマを作れ!ってことなんですけど、こんな主張もここ数年はさすがに時代錯誤も甚だしいのか、カーメディアなどでは見かけることもなくなりました。

  64psの軽自動車が200万円近くもする時代に「何を寝ぼけてんだ!?」と言われることは覚悟の上ですけれども、いろいろな快適装備を全部取っ払えば、十分に実現可能じゃないですかね。最近のクルマは標準装備の段階ですでに豪華過ぎです。ブランドの上級グレード車に自動ブレーキが付いてないだけで「完全否定」してくる意味不明な評論家が湧いています。「オマエは安全評論家か?電車でも乗ってろ!」・・・。世の中には「日本向け生産車」というジャンルがあって南アフリカ・タイ・メキシコといった「製造下請け国」には、右ハンドル専用ラインってのがあります。そこで作られたクルマは日本で結構なお値段で売れるので、価格相応にガソリンターボとか多段式ATとか「スペック表」に書けるものはとりあえず全部載せてきます。その代わり履いているタイヤは韓国メーカーのランフラットだったりしますが・・・。

  そんなクルマばかりが輸入されるので、ボルボとかメルセデスとかのクルマは全世界で自動ブレーキが標準装備されていて、ガソリンターボが当たり前だと勘違いしている人いますけど、欧州市場ってのはパワートレーンが選び放題なのが原則です。日本にいるとPSA(プジョとシトロエン)のクルマは1.2Lと1.6Lターボだけだと錯覚してしまいますが、3LのV6エンジンだってありますし、ディーゼルエンジンだってあります。なんで日本向けは1.2Lや1.6Lしかないか?ってそりゃあターボ外せばそのまま途上国向けのエンジンとして使えますから・・・。タイのエンジン工場で日本向けも途上国向けもまとめて作っているからです。

  中にはフォード・フォーカスの日本仕様のように、タイ生産ゆえに2Lのしっかりしたエンジンを積むケースもあるようです(マツダと共同開発したエンジンなので、製造拠点がタイにある)。けれどもほとんどの日本に持ち込まれる小型の輸入車ってちょっとスペックをググれば、なるほど!アジアの工場からほとんどの部品を調達しているんだ〜・・・ってのが分ってしまってガッカリします。ちょっと前に「VW車なんてインドで50万円で売ってるよ〜!」とブログに書いたら、何を血迷ったかゴチャゴチャ言って来る人がいるんですよね。本当に何も知らずにVWを選んでいるんだな・・・ってのが良くわかって、こんな人々の価値観で「日本車なんてダメダメ」とか語られたら、日本メーカーがやる気なくしちゃうのも頷けます。


  ちょっと話が脱線しましたが、そういえばトヨタ86がデビューした当時は、エアコン無しで本体価格が199万円とかいうグレードがありました。200psですから一応は「1馬力1万円」をクリアしています。しかしエアコン無しのクルマなんて日本ではもはや理解されないでしょうね。北海道で乗る分にはちょうど良いのかもしれないですけど、同時に寒冷地でFRのドリフト仕様車を乗り回すだけの技術も必要です。BMWのドイツ本国車はエアコンなんてオプション装備らしいですよ。確かに日本の気候では欠かせない装備のように思いますけど、窓やルーフを全開にすれば夏場はなんとかなりますし、冬場もしっかりと服装で防寒して、バイクに乗ることを思えば風が避けられるだけでもマシって思います。実際に夏場に窓全開で走っているドイツ車をよく見かけますが、その99%はエアコン不調が理由です(つまりエアコン無しでもなんとかなる)。

  トヨタ86はコストが割高になる専用設計シャシーなのですが、それでも装備を省けばなんとか「1馬力1万円」で採算がとれるようです。それならばベース車のシャシーを使って、ベース車と同じ生産ラインで作る(日産GT-Rがこの方法)ならば、「150psで150万円」も十分に可能じゃないですかね。ヴィッツかカローラをベースにしてスポーツチューンを施した1.6Lか1.8LのNAエンジンを載せればOKです。ちなみにトヨタが欧州向けオーリスとロータスエリーゼに提供する1.6Lだと136psで、北米向けカローラと国内のフィールダーやオーリスなどに使う1.8Lだと144psくらい出ます。ただしヴィッツやカローラといったベース車がFF(前輪駆動)なので、それだけでスポーツカー好きから「対象外」とされてしまうことがもちろん懸念されます。

  トヨタが自信を持って提案する「スポーツカー」という前提があることで、なかなか安易に手を出しにくい部分もあるのかもしれません。要するに面子やプライドの問題です。例えば最初から「乗り出し150万円!」という条件で開発するとなると、よっぽどの技術的なブレイクスルーがない限りは、「トヨタに相応しいクルマにならないので却下」という結論になってしまい何も始まらない・・・ってことです。ドイツのフォルクスワーゲンが「日本で本体価格150万円で売る!」という決意のもと投入してきたモデルが今も売られています。もちろん輸入車としては破格のお値段ですが、「これがフォルクスワーゲン?」と訝しくなるほどのクオリティの低さ・・・これにはさすがの輸入車ファンも幻滅したのでは。

  ここで改めて気がつくのですが、実は日本メーカーのほぼ全てがブランドの「上の部分」よりもむしろ、「下の部分」に相当に気を使ってクルマを作っています。ドイツ車の「底辺」って本当にとんでもなく雑な作りをしてますが、日本車の「底辺」はそれほど酷くないです。なので一般的に途上国での日本車の評価は異常なまでに高いです。簡単に推測すると日本人の「中流意識」がクルマ作りにも大きく影響しているってところでしょうか。しかしその分、超高級車を作ることにはまだまだ不慣れではあるようですが・・・。つまり・・・桁違いの日本の資産家が、とりあえず輸入車を愛用することはとっても理にかなっているのですが、ごくごく普通の一般人が欧州車に無理に執着したところでロクな事は無いってことです。

  「安心して乗れる」という日本車の美点が損なわれるのは嫌なんですけども、日本車ももっとラディカルな装備の若者向けの「お手軽なモデル」を作ってもいいと思います。三菱がミラージュを発売する時に普通車で80万円!という「1馬力1万円」の価格設定をしようとしたらしいですが、結局は未遂に終わりました。しかし昨年末に登場したスズキ「アルト」は49psで69万円!というなかなか「攻めた」価格付けをしてきました。スズキにはぜひに頑張ってほしいです! すでにインドを始めとした多くの地域では35万円(20万ルピー)前後の乗用車が当たり前に売られています。しかもその販売の中心にいるのはスズキです。日本でもこれに近い価格のクルマが出てきてもいいように思うのですが、しかしさすがにご想像のとおりいろいろな方面からプレッシャーがかかってしまうようで(他のモデルが売れなくなる)、簡単にはいかないようです。日本のモーターショーでも出品されて話題になりましたが、現在10万ルピーに設定されているインドのタタ・モータース「ナノ」の日本市場への参入はどうやら永遠に無さそうですね・・・。


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