BMWとメルセデスはどこへ向かっている?
クルマにあまり興味がない人、例えば年老いたウチの母親、でも知っている輸入車ブランドが、ベンツ、BMW、ポルシェ、フェラーリの4つでしょうか。以前に故郷にいる同級生の旦那が「ロータスを買った」と電話で聞いたらしく、私に「ロータスってどんなクルマ?」と尋ねてきました。「2人乗りのちっこいスポーツカーだよ」と返事すると、「え?2人乗り?でも今度一緒にドライブしようねって言ってたよ?」と言うので、最近の60代はエヴォーラ(ロータスで唯一リアに狭いシートがあるモデル)なんか買っちゃうのか・・・と思い、「凄いねそれ1000万円くらいするクルマだよ!」というと母は思わず仰天してました。「けど、後ろのシートメチャクチャ狭いと思うよ」という私の一言に釈然としなかったようで、後日そのご友人と再び電話した際に聞くと、どうやらロータスではなくアウディだったようです。アウディなんてせいぜいその程度のブランド価値(認知度)なんですね・・・。
機械工業の最先進国だった日本に、2000年頃に攻勢をしかけてきたアップルは、瞬く間に「携帯音楽プレーヤーならアップル」という認識を植え付け、ソニーとウォークマンを完全に過去のものにしました。そして新しいアイテムでも成功を収め「タブレットならアップル」「携帯電話ならアップル」といった圧倒的なブランド価値を日本で誇っています。同時期に華々しい躍進を遂げたアウディも同様に「クルマならアウディ」のイメージを作り上げるか?と思われましたが、急遽として日本に凱旋したレクサスによって野望は阻まれた感があります。ウチの母親の水準からすればアウディもレクサスもまともに認知すらされていません。
そんな田舎の婆さんの認識なんかどうでもいい!!なんてのはごもっともですけど、「アウディらしさ」「レクサスらしさ」って何ですか?と訊かれると、「えっと・・・」と返答を困ってしまいます。結局のところこの2ブランドにはモヤモヤした感じがあるだけで、何ら主体性なんて無いです。ランボルギーニの技術を移植したり、ヤマハが特別に組んだエンジンを使っただけのスーパーカーがそれぞれにシンボル化されてますが、その「アウディR8」と「レクサスLFA」が備えるものと他のモデルとの共通点はほぼ皆無です。アウディやレクサスなんて知らん!というお年寄りの認識を簡単に笑い飛ばすのは少々早計な気がします。本当に良いものを作って、10年ほど日本でやっていればお年寄りにも十分に認知される存在になるはずですから。(オマエのお袋の友人の旦那はアウディ買ってるじゃん!という指摘もあるでしょうけど・・・)
お年寄りでも知っているレベルの超名門ブランドである「ベンツ(メルセデス)」「BMW」「ポルシェ」「フェラーリ」の4つには確かに、「乗用車ならベンツ」「乗用車ならBMW」「スポーツカーならポルシェ」「スポーツカーならフェラーリ」と言わせるだけの十分過ぎる過去の業績があります。いちいち検証したりはしないですけど、バブル崩壊から20年以上経っても自動車業界においては、アップルのような日本全体の認識を根底変えてくれるだけの「変革」が全くと言っていいほどやって来ていないのかもしれません。マセラティ、ベントレー、マクラーレンでは価格に応じた価値が十分に提供できていないという訳ではないでしょうが、やはりやや浮遊し過ぎていてイマイチ収まりが悪い気がします。それが「フェラーリ」ならば、芸術的な自動車としての着地点を確立しています。ちょっと的外れかもしれないですが、べ−トーベンは受容されているけど、メシアンやヒンデミットは受け入れられないのと同じ構造でしょうか・・・。
「ポルシェ」に関してはもっと分りやすいです。ドイツ人のアイデンティティと言えるブランドですが、とても日本的な世界観を湛えたスポーツカーだと思います。日本で長く愛される理由ばかりが詰まった奇跡のスポーツカーが911シリーズです。日本の道を走り易いサイズ感ももちろんですが、ポルシェが持つ「非合理的な設計」が日本人の感性に合っています。つまり日本の機械マニアは「特殊設計」が大好きで、911が「RR」という世界のどのメーカーにも採用されていない駆動方式を守り続けているそのポリシーに大いに賛同する傾向にあります。これと同じような個性的な設計のクルマで、ロータリーエンジンを搭載した究極のスポーツカー「マツダRX7」の人気は衰えることを知りませんし、カローラベースのクルマとしては最期のFRモデルとなった「AE86系スポリンタートレノ/レビン」(通称:ハチロク)は神格化されています。ほかにも日産最期の直列6気筒モデルとなった「34スカイライン」やポルシェと同じRR設計の「スバル・サンバー」など、日本人は個性的な設計のクルマが好きです。
フェラーリやポルシェと肩を並べるネームバリューを持つ「メルセデス」と「BMW」ですが、ブランドの重心は一貫して「スポーツカー」ではなく「乗用車」に置かれているために、設計の合理化の波に否応なしに呑み込まれます。この20年足らずで、いすず、サーブ、ローバーなど幾多の乗用車ブランドが淘汰され、ミニ、オペル、ボルボ、ジャガー、マツダ、スバル、スズキ、そして日産までが業績不振で他社の傘下に入る経験をしました。そんな中でトヨタやホンダといったいわゆる「ハイブリッド組」(勝ち組)と並んで、独立を保ち続けたメルセデス(一度クライスラーとの合体はありましたが)とBMWに対して称賛と敬意を持つ自動車ファンは多いです。しかしアメリカに深く根を張ることに成功したトヨタやホンダに対し、メルセデスやBMWの業態は安定感に欠け、いつしかクルマ作りそのものが部品メーカー主導へと切り替わっていきました。
誤解を恐れずに言うと、2000年以降に発表されたメルセデスやBMWのモデルはほぼ全てが「駄作」です。おそらくあと10年20年のちに「あれは名車だった!」と称賛されるクルマは1台も無いでしょう。数年前に「メルセデスやBMWはクソだ!」なんてド素人が生意気にも言い放てば、周囲から「アホか・・・」と非難されるのが当然でしたが、今では「正論だ!」と受け入れられそうなくらいに、この両ブランドのクルマはイマイチ評判が悪いです。
それもそのはずで、全ては経営の合理化が行き過ぎていることに由来します。この両社のクルマ作りに大きな影響力を持っているのが、ドイツの国策企業で「世界最大」の部品メーカーのボッシュです。しかしその「世界最大」と称されるメーカー連合の陣容を見ると開発拠点がアメリカというものが多いです。最近ボッシュの完全子会社になったZFもそうですが、ボッシュグループの多くはアメリカビッグ3が抱えていた系列部品メーカーを国策としてドイツ資本が買い漁っているに過ぎません。メルセデスもBMWもドイツの国策に則ってボッシュグループの重要な取引先としてのスタンスが求められます。本来ライバルであるはずのメルセデスとBMWが多くの部品で同じサプライヤーから供給を受けているのです。これでは開発者もやる気が出ません・・・。
日本で長らくライバル関係にあるトヨタと日産は、例えばミッションに関してはそれぞれに系列部品メーカーの「アイシンAW」と「ジャトコ」がステップATやCVTの性能を世界最先端のレベルで争っています。それに対抗するホンダはややリコールが多いのが気になりますが、必要なミッションは内製もしくはシェフラーというDCTのコストパフォーマンスに優れたVWと懇意のサプライヤーのものを使っています。ドライブフィールにこだわりを持つマツダは、「ミッションは生命性」とばかりに内製していて、特にMTはあまりの使い勝手の良さで、ケータハムなどの欧州のスポーツカーメーカーから注文が舞い込んでいます。
日本勢に比べて圧倒的に不利な条件でのクルマ作りが余儀なくされている、メルセデスとBMWに対する同情の念はありますが、やはり日本車よりも相当に割高な価格を考えても、もっとクルマ作りに真剣に取り組んでくれてもいいのでは?という気もします。私個人としては、福野礼一郎氏が言う「暗黒時代!」といった意見の尻馬に乗るつもりはないですけど、実際に相当な期待感を持って乗りに行く度に心が曇ります。単に期待が高過ぎるというのではなく、そのディーラーの行き帰りに乗る愛車(マツダ)に完全に負けていると実感できるからです。ハンドリングもアクセルもブレーキも300万円足らずのマツダに負けているクルマなのに、その見積もりは500万円を軽く超えています。あくまで私の感想ですから、マツダなんて絶対に乗らない!という人には何の意味もないですけど。
現在では「乗用車といえばメルセデス」あるいは「BMW」という過去の評判は、実態を伴わないものになっていると断言できます。かといってそれに変わるメーカーも見当たりません。強いて言うならば「乗用車といえばハイブリッド」という認識はもの凄い大きなうねりとなって自動車業界を直撃しています。メルセデスは日本ではあまり意味が無いマイルドHVを搭載したモデルを誤魔化して販売するようですが、600万円以上という価格帯を考えれば、高度に情報化された日本の自動車ユーザーを欺くのは難しいでしょう。
BMWも2012年のディーゼル導入で、日本勢のハイブリッドへの叛旗にある程度の手応えはあったようですが、馬鹿みたいにウルサイことこの上ないエンジン音は、せっかく高級ブランドに陶酔した日本のユーザーを完全に冷ましてしまうほどに下劣です。状況としてはメルセデスもBMWも完全に行き詰まっているように見えます。開発力の無いメーカーには生き残る術は無い!のは世界共通であり、メルセデスやBMWといえども逃れられないわけですが、そんな状況を打開すべく、BMWは開発コストが安いEVへとドメインを広げ、メルセデスは直列6気筒エンジンの復活を企画しているようです。
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↓福野さんがメルセデス「暗黒時代」の終焉を示唆しておられますよ!!!
機械工業の最先進国だった日本に、2000年頃に攻勢をしかけてきたアップルは、瞬く間に「携帯音楽プレーヤーならアップル」という認識を植え付け、ソニーとウォークマンを完全に過去のものにしました。そして新しいアイテムでも成功を収め「タブレットならアップル」「携帯電話ならアップル」といった圧倒的なブランド価値を日本で誇っています。同時期に華々しい躍進を遂げたアウディも同様に「クルマならアウディ」のイメージを作り上げるか?と思われましたが、急遽として日本に凱旋したレクサスによって野望は阻まれた感があります。ウチの母親の水準からすればアウディもレクサスもまともに認知すらされていません。
そんな田舎の婆さんの認識なんかどうでもいい!!なんてのはごもっともですけど、「アウディらしさ」「レクサスらしさ」って何ですか?と訊かれると、「えっと・・・」と返答を困ってしまいます。結局のところこの2ブランドにはモヤモヤした感じがあるだけで、何ら主体性なんて無いです。ランボルギーニの技術を移植したり、ヤマハが特別に組んだエンジンを使っただけのスーパーカーがそれぞれにシンボル化されてますが、その「アウディR8」と「レクサスLFA」が備えるものと他のモデルとの共通点はほぼ皆無です。アウディやレクサスなんて知らん!というお年寄りの認識を簡単に笑い飛ばすのは少々早計な気がします。本当に良いものを作って、10年ほど日本でやっていればお年寄りにも十分に認知される存在になるはずですから。(オマエのお袋の友人の旦那はアウディ買ってるじゃん!という指摘もあるでしょうけど・・・)
お年寄りでも知っているレベルの超名門ブランドである「ベンツ(メルセデス)」「BMW」「ポルシェ」「フェラーリ」の4つには確かに、「乗用車ならベンツ」「乗用車ならBMW」「スポーツカーならポルシェ」「スポーツカーならフェラーリ」と言わせるだけの十分過ぎる過去の業績があります。いちいち検証したりはしないですけど、バブル崩壊から20年以上経っても自動車業界においては、アップルのような日本全体の認識を根底変えてくれるだけの「変革」が全くと言っていいほどやって来ていないのかもしれません。マセラティ、ベントレー、マクラーレンでは価格に応じた価値が十分に提供できていないという訳ではないでしょうが、やはりやや浮遊し過ぎていてイマイチ収まりが悪い気がします。それが「フェラーリ」ならば、芸術的な自動車としての着地点を確立しています。ちょっと的外れかもしれないですが、べ−トーベンは受容されているけど、メシアンやヒンデミットは受け入れられないのと同じ構造でしょうか・・・。
「ポルシェ」に関してはもっと分りやすいです。ドイツ人のアイデンティティと言えるブランドですが、とても日本的な世界観を湛えたスポーツカーだと思います。日本で長く愛される理由ばかりが詰まった奇跡のスポーツカーが911シリーズです。日本の道を走り易いサイズ感ももちろんですが、ポルシェが持つ「非合理的な設計」が日本人の感性に合っています。つまり日本の機械マニアは「特殊設計」が大好きで、911が「RR」という世界のどのメーカーにも採用されていない駆動方式を守り続けているそのポリシーに大いに賛同する傾向にあります。これと同じような個性的な設計のクルマで、ロータリーエンジンを搭載した究極のスポーツカー「マツダRX7」の人気は衰えることを知りませんし、カローラベースのクルマとしては最期のFRモデルとなった「AE86系スポリンタートレノ/レビン」(通称:ハチロク)は神格化されています。ほかにも日産最期の直列6気筒モデルとなった「34スカイライン」やポルシェと同じRR設計の「スバル・サンバー」など、日本人は個性的な設計のクルマが好きです。
フェラーリやポルシェと肩を並べるネームバリューを持つ「メルセデス」と「BMW」ですが、ブランドの重心は一貫して「スポーツカー」ではなく「乗用車」に置かれているために、設計の合理化の波に否応なしに呑み込まれます。この20年足らずで、いすず、サーブ、ローバーなど幾多の乗用車ブランドが淘汰され、ミニ、オペル、ボルボ、ジャガー、マツダ、スバル、スズキ、そして日産までが業績不振で他社の傘下に入る経験をしました。そんな中でトヨタやホンダといったいわゆる「ハイブリッド組」(勝ち組)と並んで、独立を保ち続けたメルセデス(一度クライスラーとの合体はありましたが)とBMWに対して称賛と敬意を持つ自動車ファンは多いです。しかしアメリカに深く根を張ることに成功したトヨタやホンダに対し、メルセデスやBMWの業態は安定感に欠け、いつしかクルマ作りそのものが部品メーカー主導へと切り替わっていきました。
誤解を恐れずに言うと、2000年以降に発表されたメルセデスやBMWのモデルはほぼ全てが「駄作」です。おそらくあと10年20年のちに「あれは名車だった!」と称賛されるクルマは1台も無いでしょう。数年前に「メルセデスやBMWはクソだ!」なんてド素人が生意気にも言い放てば、周囲から「アホか・・・」と非難されるのが当然でしたが、今では「正論だ!」と受け入れられそうなくらいに、この両ブランドのクルマはイマイチ評判が悪いです。
それもそのはずで、全ては経営の合理化が行き過ぎていることに由来します。この両社のクルマ作りに大きな影響力を持っているのが、ドイツの国策企業で「世界最大」の部品メーカーのボッシュです。しかしその「世界最大」と称されるメーカー連合の陣容を見ると開発拠点がアメリカというものが多いです。最近ボッシュの完全子会社になったZFもそうですが、ボッシュグループの多くはアメリカビッグ3が抱えていた系列部品メーカーを国策としてドイツ資本が買い漁っているに過ぎません。メルセデスもBMWもドイツの国策に則ってボッシュグループの重要な取引先としてのスタンスが求められます。本来ライバルであるはずのメルセデスとBMWが多くの部品で同じサプライヤーから供給を受けているのです。これでは開発者もやる気が出ません・・・。
日本で長らくライバル関係にあるトヨタと日産は、例えばミッションに関してはそれぞれに系列部品メーカーの「アイシンAW」と「ジャトコ」がステップATやCVTの性能を世界最先端のレベルで争っています。それに対抗するホンダはややリコールが多いのが気になりますが、必要なミッションは内製もしくはシェフラーというDCTのコストパフォーマンスに優れたVWと懇意のサプライヤーのものを使っています。ドライブフィールにこだわりを持つマツダは、「ミッションは生命性」とばかりに内製していて、特にMTはあまりの使い勝手の良さで、ケータハムなどの欧州のスポーツカーメーカーから注文が舞い込んでいます。
日本勢に比べて圧倒的に不利な条件でのクルマ作りが余儀なくされている、メルセデスとBMWに対する同情の念はありますが、やはり日本車よりも相当に割高な価格を考えても、もっとクルマ作りに真剣に取り組んでくれてもいいのでは?という気もします。私個人としては、福野礼一郎氏が言う「暗黒時代!」といった意見の尻馬に乗るつもりはないですけど、実際に相当な期待感を持って乗りに行く度に心が曇ります。単に期待が高過ぎるというのではなく、そのディーラーの行き帰りに乗る愛車(マツダ)に完全に負けていると実感できるからです。ハンドリングもアクセルもブレーキも300万円足らずのマツダに負けているクルマなのに、その見積もりは500万円を軽く超えています。あくまで私の感想ですから、マツダなんて絶対に乗らない!という人には何の意味もないですけど。
現在では「乗用車といえばメルセデス」あるいは「BMW」という過去の評判は、実態を伴わないものになっていると断言できます。かといってそれに変わるメーカーも見当たりません。強いて言うならば「乗用車といえばハイブリッド」という認識はもの凄い大きなうねりとなって自動車業界を直撃しています。メルセデスは日本ではあまり意味が無いマイルドHVを搭載したモデルを誤魔化して販売するようですが、600万円以上という価格帯を考えれば、高度に情報化された日本の自動車ユーザーを欺くのは難しいでしょう。
BMWも2012年のディーゼル導入で、日本勢のハイブリッドへの叛旗にある程度の手応えはあったようですが、馬鹿みたいにウルサイことこの上ないエンジン音は、せっかく高級ブランドに陶酔した日本のユーザーを完全に冷ましてしまうほどに下劣です。状況としてはメルセデスもBMWも完全に行き詰まっているように見えます。開発力の無いメーカーには生き残る術は無い!のは世界共通であり、メルセデスやBMWといえども逃れられないわけですが、そんな状況を打開すべく、BMWは開発コストが安いEVへとドメインを広げ、メルセデスは直列6気筒エンジンの復活を企画しているようです。
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