2016年12月21日水曜日

新時代の「自動車カースト」・・・は定着するのか?

  「自動車カースト」。あんまり良い言葉じゃないですけど、自動車メーカーが高級車を企画する段階で、徹底的にプロファイリングをするものらしいです。つまりカースト無くして高級車の価格なんて一切決められない!!ということです。もちろん日本で販売される大多数の大衆的で実用性の高いクルマに関しては、販売台数の多さや中古車の流通量から、ある程度の市場価格が決まってくるので、このようなカーストとは無関係ではありますが・・・。

  日本での販売価格を示した価格表をじっくり見ると、「700~1000万円」「1200~1800万円」「2400万円以上」の大雑把に3つぐらいのグループに分かれていることに気がつきます。そしてこの3段階を決めているブランドはおそらくメルセデスです。たぶんこのブランドは顧客を独自にランク付けしていて、2400万円〜のオーナーは「上」、1200~1800万円のオーナーは「中」、700~1000万円のオーナーは「下」としてサービスにもある程度の格差を設けているようです。

  それより下の価格帯のオーナーに対しては・・・ゴ◯ブリ扱い(これマジです)。こんなブランドで1台目としてAクラス(298万円〜)を買うなんてちょっとハズかしいですよね。「わざと乗り心地を悪くしてあるのに、喜ぶなんてさすがゴ◯ブリだな〜・・・」って思われますよ。これが高級ブランドってヤツです。

  ちょっと込み入った話になりますが、メルセデスには「AMG」と呼ばれる高性能モデルが設定されていて、「上」にランクされるモデルはその「AMG」の中で最高級のシャシーを使っている「S」「Sクーペ」「SL」の3台だけです。二流のシャシーを使う「E」「CLS」「GLS」「GLE」などのAMG版は「中」どまり、さらに下流のシャシーを使う「SLC」「GLC」「A」「CLA」「GLA」のAMG版が「下」です。

  他のブランドをこれに当てはめてみると、初代NSXは「下」だったのに、2代目は一気「上」までジャンプアップしています。現在カタログモデルとして「上」を用意している日本メーカーはホンダだけですね(北米生産車ですが・・・)。この値上げに関して当然ながら批判も出て来るわけですが、ホンダがNSXに持ち込んだ技術的な裏付けは、他の「上」のクルマを作るあらゆるブランドよりも進んだシステムと言われてますから、妥当な価格設定だと思います。

  ホンダという総合メーカーが、持ちうる技術の集大成として「上」の価格帯にクルマを送り込んでくる。このことで多くの軋轢を生むとは思いますが、そのクルマに自信があるのならば、それはとても良い事だと思います。初代NSXも当時の「上」に位置したスーパーカーに完全に喧嘩を売ってました。最高速度の公称値が300km/hなのに、市販モデルではどう頑張っても出せない・・・ランボルギーニなんてそんなクルマばっかりだったとか。測定用のクルマは専用にチューンされたエンジンにスポーツタイヤを履くのが当たり前・・・そんなデタラメな世界が、NSXやGT-Rの登場である程度是正されたようです。

  自動車産業に健全化を訴えるプロジェクトの総称として「NSX」や「GT-R」があるのだと考えれば、そのモデルの価格についてあれこれ言うべきではないかもしれないです。むしろ大手メーカーゆえに下手なダンピング戦略を採ったならば、高性能車を愉しむ文化を逆に破壊する可能性もあります。自動車メーカー同士の紳士協定というべきかもしれないですが、2400万円で正々堂々と勝負しましょう!!ということで、NSXに加えて、アウディR8、ランボルギーニ・ウラカンのFR版、アストンマーティンDB11など最近発売されたモデルがこの価格帯に集中させて「横並び」でクルマを愉しんでもらおうという狙いもあるのかもしれません。

  「中」のカテゴリーはレクサスLS600hやGT-R・NISMOなどトヨタと日産の看板モデルが張り合っています。マセラティ、BMW、ジャガーのトップグレードもこの価格帯です(BMWアルピナには「上」があるけど)。それから日本のユーザーが大好きなポルシェ911の大部分のグレードがここに入ります。あまり馴染みがないキャデラック(GM系の高級ブランド)などが全く参入できない価格帯ですから、ある程度日本で知名度と実績があるブランドじゃないとなかなか参入できないゾーンと言えるかもしれません。日本でしっかり認められたブランドの上級モデル!!というステータスは、ユーザーの品格や知性を示すには格好のクルマじゃないかと思います。

  「下」のカテゴリーは、ちょっと解釈が難しいですけども、都心のタワーマンションを買ったならこんなクルマに乗っておけばいい!くらいの指針でしょうか。それでも一生をサラリーマンで暮らす人々にとっては「高値の花」ですね。いやいや人に使われている輩が輸入車なんてチャラついてんじゃねー!!カローラに乗ってればいいんだよ、あるいはカンパニーカー(会社貸与車)を使ってろ!!って意見もあるかもしれません(結構正論だな・・・)。

  「下」とはいってもトヨタと日産以外でこの価格帯でクルマを発売している日本メーカーはホンダだけで、しかもそのたった1台のレジェンドは日本市場での廃止が検討されているんだとか。ポルシェだとスポーツカーの718ボクスター/ケイマンやマカン、カイエン、パナメーラなどの大部分のモデルが入っていて、販売はいずれも好調なようです。一方でこの価格帯で苦戦が目立つのがメルセデス、BMW、アウディ。この3ブランドの販売の中心は完全に「圏外」のモデルにシフトしていて、ゴ◯ブリ(高級ブランドで「下」より下のモデルを買う人)によって経営が支えられています。

  メルセデス、BMW、アウディの「下」カテゴリーでの苦戦を尻目に、スバルが発売した「WRX STI」をベースにした700万円近い限定モデル「S207」が1日で400台を完売しました。スバルもいよいよそんな価格のコンプリートモデルを出すようになったか!?という驚きもありますが、その価格設定が完全に「安過ぎる」と示すかのようなあっけない「完売」劇。マツダが開発中というロータリーエンジンを使ったスーパースポーツも堂々とこの「下」カテゴリーに参入してくるようです。BMWも今年に入って発売した「M2」の販売が好調で、このカテゴリーで巻き返しを図っています。

  それなりに高い満足感が得られるスポーツモデルか、Eクラスや5erのような実績十分のセダン。あとはマセラティ・ギブリやランドローバーのレンジローバー・イヴォーグなど、高級ブランドのお試しモデルもあります。「中」カテゴリーほどの知性はないかもしれないですが、「クルマ道楽」を宣言するには十分なモデルが揃っているのは確かです。さらにこれからの「EV時代」をリードする存在と考えられているテスラも、どうやらメルセデスが敷いたカーストに沿ってモデルを展開しているようで、最廉価モデルがこの「下」カテゴリーに置かれています。

  メルセデスやテスラが設定した階層なんてどーでもいいわ!!って気もしますが、これらの価格に見合うように各メーカーがシビアにクルマを開発して、たとえ日本の大衆ブランドであっても、大風呂敷を広げて、そこにあらん限りの知恵と技術を放り込んで、成功を掴んで行くためのある種の「基準」だと考えるとそれなりに有意義なものだと思います。

  そしてクルマを買う我々ユーザーも、長過ぎる人生を生きる活力の1つとして「自動車カースト」があってもいいんじゃないか?と思います。それを目標に頑張るというのももちろんあります。いい大学行って大手企業に務めて真面目に働けば、「下」くらいは手が届くかな?「中」に乗るためにはトップにならなければ!!「上」に乗るためには1つの会社に収まっていてはダメか・・・なんてあれこれ人生を俯瞰する材料にはなりそうです。ダラダラと仕事の真似事をして、会社に煙たがられながらも扶養されて、挙げ句の果てにゴ◯ブリなんて人生は嫌だー!!!ってのは大事だと思うんですよ。